池田晶子レクイエム
―もうこの世にいない君へ
君は現代のドンキホーテだな
現代社会に対し
勝ち目のない戦いを何と果敢に挑んでいることか
精魂こめて、若者に語りかけようとする君の言葉には
君という人間の全存在がかかっている
ああ、しかし、なんと痛々しいことか
君の呼びかけを真に理解する若者が何人いるのだろうか
君の本は、情報化され、だから、みんなが買う
それは君の生活の支えとなる
君はそんなことに負い目を感じる必要はない
しかし、君の本を買った若者たちは、君の本に書いてあることを、君と同じ真剣さでは受け止めない
それに、そもそも書いてあることの意味が分からない
わかろうと努力することもしない
一見読んでいるように見えても読んではいない
せいぜい頭のよいヤツが、
「この人の考え方はこうこうしかじかで、このあたりが入試に出るよ」とこざかしく情報化するだけだ
そういうヤツは
「この人の考え方もわからなくはないけれどね… でも、まあ、こんなことばかり考えていたら、現実には生けていけないよ」
と物分かりのよさそうなことをしゃあしゃあとぬかすだろう
人間の世界はソクラテスの昔からずっとそんなものであったのだ
しかし、僕はニヒリズムをもちだすつもりはない
そんな世界であれ
君という一点にはかけがえのない存在価値がある、と言いたいだけなのだ
君の生きざまは「真の考える人間たる証」であったのだから
君はソクラテスの末裔、その正当な後継者
真実の星よ
永久に輝け