歴史・歴史時事問題特別授業の観点

2008 年度歴史社会特別授業は夏期講習の一部として行います。夏期講習のお知らせ→シーズン特訓

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歴史を勉強する場合、暗記作業は欠かせません。しかし、歴史の勉強はただの暗記につきるわけではありません。もっと大切なことがあるのです。それは歴史の大きな流れと、その原因をとらえることです。これは、歴史の表面的な現象とその内部にひそむ原因との関係をとらえることです。この講座は、このような観点から歴史をとらえていきます。



 

1 たとえば、奈良時代について考えてみましょう。奈良時代は、大化の改新に始まる律令政治(天皇中心の政治)の完成とともに始まります。

―青によし奈良の都は咲く花のにおうがごとく今盛りなり―

この歌に歌われているように奈良の都は、それまでにない繁栄を謳歌(おうか)していたのでしょう。しかし、その奈良時代が始まって間もなく、律令制を支えていた公地公民制は動揺し始めます。奈良時代の初めごろになると、人口が増えたために、口分田が足りなくなってきます。また、祖・庸・調などの税が重いため、口分田をすてて逃げ出す農民がでてきたりもします。当時の民衆の生活の苦しさは山上憶良の「貧窮問答歌」に歌われています。
  そこで、公地公民の制度を手直しして、新しく開墾した土地は、自分のものにしてよいということにしました。ところが、こうなると、有力な貴族や寺社は、逃亡農民などを使って、競うように新しい土地の開墾を進め、自分の土地を増やすようになりました。
 このことは、私有地私有民が増え始めたということを意味します。つまり、公地公民の反対の事態が起きてきたのです。それはまた、公地公民の上に成り立っていた天皇中心の政治がくずれてくることをも意味します。天皇中心の政治ができ上がるとすぐにこのようなことが起きてきたのです。そして、このような私有地・私有民の増加は、やがて荘園制を生み出していくのです。こうして、天皇の力は弱まり、多くの荘園を手に入れた藤原氏が摂関政治を始めることになるのです。このように、奈良時代の初めにおいて、すでにその水面下には、次の平安時代を作るものが生まれていたのです。 

このように歴史をダイナミックにとらえれば、大宝律令、平城京遷都、聖武天皇の仏教政治、三世一身法、墾田永年私財法、荘園の発達、平安京遷都、藤原氏の発展、武士の発生、などの知識もひとつの流れの中で理解し、覚えるべきものであることが分かってきます。


2 ところで、このような歴史のとらえ方は、歴史の現時点の問題の原因を深く掘り下げ、歴史の将来を展望しようとすることへとつながります。歴史の現時点の問題が歴史を動かすのであり、それらの問題を深く掘り下げれば、歴史の将来も見えてくるからです。

3 たとえば、十五年か二十年前の日本人は、高度経済成長は終わったとは言え、なお右肩上がりの成長という神話を、そしてバブル経済の中で永遠の繁栄を、信じていました。しかし、その後の日本は、10年余りの間、戦後最大の不況(平成大不況)に見舞われることになりました。なぜこんなことになったのでしょうか。ここに平成大不況の原因を歴史的に掘り下げて考えることの大切さがあります。それが日本の将来のあり方を展望することへもつながるのです。

4 たとえば、01年9月11日のテロ事件を機に、アメリカは「テロ撲滅」という旗印を掲げ、オサマ・ビン・ラディンの捕捉とアルカイダの壊滅、それらをかくまうタリバン政権の打倒のためにアフガンを空爆し、一定の勝利を得ました。日本はこのアメリカを支持する立場に立ち、テロ対策特別措置法の制定、自衛隊の艦船のインド洋への派遣などを行いました。これらの一連の動きはテレビで連日報道されていましたから、皆さんも良く知っていることと思います。しかし、なぜあのテロ事件が起きたのかについてはあまり考えてはいないのではないでしょうか。単にオサマ・ビン・ラディンという悪人がアルカイダというテロ組織を作り、アメリカにテロを仕掛けたという偶然的な事件と思っている人も多いと思います。テレビの報道の大半は戦況の報道に終始していましたから、無理もないといえます。テロ自体は絶対に許されないとしても、その温床は意外に根深く広範であるのです。ここに歴史的視点をもつことの大切さがあります。20世紀後半からグローバル化ということが進行していますが、とくに経済と政治のグローバル化の先導者であるアメリカの政策は、他の国々の文化を尊重するものであったのか、また、経済力の異なる他の国々に対して公正であったのか、という問題があります。この歴史の現在の問題を深く掘り下げれば、「テロ撲滅」ということもどのような方法をもってなされるべきか見えてくるように思われるのです。

5 もちろん、この講座はあくまで受験対策として行うものですから、歴史の将来への展望ということに主眼をおくものではありませ。しかし、皆さんに、そのようなものの見方が大切であるということは、伝えることができるでしょう。


6 歴史の現時点にたって考える、ということについてもう少しお話しましょう。
 生物科学とコンピューター技術の飛躍的な発達も、歴史の現時点の問題としてとらえることが必要です。

まず、生物科学は、クローン動物を作り出し、生物の遺伝子の組み換えを可能にしています。さらに、ヒトゲノムの解読は人間の遺伝子の操作可能性を開きます。このことは遺伝子に原因を持つ遺伝病の治療を可能にすると同時に、例えば、ヒットラーのような人間が自分の好みの人間のみを作り出す可能性をも開きます。

他方、コンピューターの発達は、現在地球規模の情報のやり取りを即時に可能にし、さまざまな情報をハード(本・CD・ビデオテープなど)から開放しつつあります。さらに、原子レベルの加工を可能にするナノ技術の発達により、コンピュ-ターは二、三十年後には今の百万倍もの処理能力を獲得するとされます。    

このようになってくると、例えば、人の遺伝情報をコンピューターの中で合成して、バーチャル人類を育てる可能性すらでてくるのではないでしょうか。これがロボット技術あるいは生物技術と結びつけば、人間を超える生物あるいは機械を作り出すことも可能になり、偶然性と曖昧性の要素を多く持つ生物としての人間はいらなくなってくる(あるいは滅びる・滅ぼされる)のではないでしょうか。

いま歴史は、ちょうど無生物の世界であった地球に生物が生まれ出たのと同じような大転喚起、あるいは、かつて栄えていた恐竜がほろび、新たに哺乳類や鳥類の時代がやってきたのと同じような大転換期に入りつつあるのかもしれません。(いささか突飛でしょうか?)

7 私たちは、今、環境ホルモンや地球温暖化などの環境問題、農業問題、人口問題、エネルギーの問題、水の問題、さらに現在の人間が作り出した地球環境と深く関係するといわれる鳥インフルエンザなど新たなウイルス発生の問題などさまざまな問題に直面しています。また、戦争、テロ、核兵器、生物兵器などの問題も依然として解決の展望の得られない問題です。

繰り返しになりますが、これらの問題は、まさに歴史の現在の問題であるのです。私たちは歴史の現在を生きているのです。



2008年の歴史社会特別授業は、現代史の部分を、内容の豊かさは失わせないで、より簡潔で分かりやすく、かつ、覚えやすいものとなるように工夫致します。なお、小論文サンプルページの「歴史観」を参考にしてください。


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